ゲームシナリオの感情設計について考えることを考えてみてる【KawazAdventCalendar12/1】

Kawaz Advent Calendar

@tunacookです。今年のKawazAdventCalendarもよろしくお願いします。

最近「ファタモルガーナの館」をプレイしました

c3ad0a1e00f045fd58fd65bc6fbe2d89.jpg

簡単に言えば「ビジュアルノベル界隈で話題の作品」で、特段興味を惹かれたわけではないのですがとりあえず抑えておこうと思って買いました。通称「ファタモル」

https://www.amazon.co.jp/Novectacle-%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%BF%E3%83%A2%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%81%AE%E9%A4%A8/dp/B00CAKQRX2

Amazonやレビューサイトでの評価の高さを裏切らず、大変面白かったです。

映画「Branching Paths」内にも登場しています。

読んでいる最中、たびたび印象を180度変えられ「○○と思っていたが実は××だった」「いい人だと思っていたら実は嗜虐心に溢れたサディストだった」といったことが何度も起こり、何度驚かされたかわかりません。

その他にもバックログへ本編テキストにない内容を密かに仕込む、同じモチーフを何度も何度も使う……といった細かいところにも配慮を感じましたが、

読者の感情を右へ左へ揺さぶり、ジェットコースターのように持ち上げては叩き落とす。

という手法が印象的でした。

開発者の縹(はなだ)けいかさんが開発中どのように考えていたのかは不明ですが、ビジュアルノベルでありながら非常にエモい作りになっています。

そういうエモさっていうのはどうやって作るのか。 そんなことが一言二言で書けたら苦労しないし、私も知りたい!

ですが、ファタモルガーナの館をプレイしていて勝手に「こんな工程があったんじゃないか」というのを想像してみました。

それはプレイヤーの感情を想定して誘導し、演出することです。

読者の感情を設計するということ

この時点で読者はこういう疑問を抱くだろうから、そいつを使ってこのキャラクターにメタセリフとして使おう。たぶん同意してくれるだろう。

この人後で悪役にするつもりだけど、この人を良い人であるかのように描写しておけば読者は好印象を持ち、明らかにした時驚いてくれるだろう。

端的に言えばそんな感じの考えです。

感情を操る、誘導する、といった書き方が正しいかもしれません。

綺麗な話のあとに「いい話だね。それだけだったら良かったのにね……」

読者が思うであろう謎を残しておいて、後で女中に「でもこれはなぜなんでしょう?」「きっと○○なせいだと思いますわ」

ファタモルの場合、第三者視点の語り手(館の女中)がいるので、そうした読者の感情を誘導し、キャッチするするのが大変上手く、また分かりやすいように感じました。

fata_revierw_04.png

ストーリーテラーとしての役割を持つ「館の女中」

「ひぐらしのなく頃に」も……

22.jpeg

そう言えばこの感覚、既視感があるな……と思ったら、学生の頃に「ひぐらしのなく頃に」をプレイしたときも同じことを思ったのでした。

ひぐらしにも同じような描写が出てくるので、興味のある人はプレイしてみてください。コンシューマ版でもOK。やりましょう。アニメじゃ意味ないのでダメです。興味のある方にはお貸しします。

「ひぐらしのなく頃に」では羽入と梨花が神視点の語り手という役割であり、半分オムニバス形式である、といったところも似た匂いを感じました。

一本道シナリオでのギミックは、生きている人だと思っていたら実は幽霊だったとか男だと思っていたら女だったとか、どんでん返しだったり叙述トリックのような形式で表されます。「Ever17」などはその最たる例として語られているでしょう。

「ファタモルガーナの館」も「ひぐらしのなく頃に」もビジュアルノベルであり、ゲームではありませんが、本来はゲームシナリオでこそこのような手法が使われるべきだと思います。

だからといってなんでもかんでも神視点のキャラクターを出すわけにはいかないですし、メインはお話よりも体験なので、何かしらの工夫をするべきではあります。

そこでこう考えてみましょう

自分でキャラクターを操作した時といい、テキストを読んだ時といい、プレイヤーが考えて思ったことが必ずあるはずです。

「このキャラ嫌なやつだな」「この子なんとなくかわいいな」「受難だったけど報われてよかったー」という、時にシンプルだったり複雑だったりするもの。

プレイヤーをどのような感覚・感情にさせるべきなのか。そうしたものをさらにどう誘導するのか。そこがゲームシナリオライターとゲームデザイナーの腕の見せ所だと思います。書き手が全て自分で考えるのもいいですし、書き直しては他人に読んでもらってしつこく感想を聞くのもいいでしょう。

音楽ゲームやシューティングといった、操作しているだけで気持ちよくなるジャンルのゲームとは違い、アドベンチャー(私は勝手に脚本主体ゲームと呼んでいますが)は操作自体はごく地味なものです。そのため、そうした手法が有効になってきます。

普通の脚本を書くときとゲームの脚本を書く上で、概ね考えることは似ていますが、ゲームの脚本の大きな特徴として、

脚本内で仕込んだ感情は、プレイヤーが操作を行うときに利用する

ということがあります。

プレイヤーの起こす操作によってどのような感情が引き起こされるか、を予め脚本中で仕込んでおくわけです。

それぞれ操作自体はごく単純なものですが、脚本によって感情を仕込まれた状態で行う操作は「自分の体験」としてくれるはずです。

例えば、

ぎゃるちぇん(2013年 Kawaz)

5170.jpg

ゲームシステム:浮気がバレないように選択肢を選びながらバッドエンドを回避しつつ切り抜けていく

脚本内容:浮気性の主人公が、お互いにバレないように複数人のヒロインと同じ時間同じ場所でデートする

プレイヤーにさせたい体験:浮気しているのは主人公だが、プレイヤーはその浮気先を指定していることによってあたかも自分が浮気しているかのような緊張感を得る。

レイチェル(開発中 Kawaz)

1c7a3a0ed2867cc7285d5ef9a1254428.png

ゲームシステム:本来と違う世界線のヒロインについて読み、直後に開示される「思い出」からヒロインとの小話を読んで印象をダブらせつつ、キーワードを選択して質問に答える。

脚本内容:謎の男に突然斬殺されてしまったヒロインを助けるために時間を遡るはずが、手違いで平行世界に来てしまった。もとの世界へ戻るために今いる世界がどこなのかを周辺人物との関係性から探りつつ、彼女の死の真相に迫っていく

プレイヤーにさせたい体験:主人公自身は違う世界線のヒロインと問答しているが、プレイヤーは彼の思い出を追体験しているので、彼がどのように感じるかをトレースしつつ世界線の違いを探っていく。

(とするつもりなのでそうなればいいな)

HEAVY RAIN(2010年 クアンティック・ドリーム)

heavy-rain-playstation-3-ps3-196.jpeg

ゲームシステム:複数の主人公たちに起こる出来事を読みながら、その中で起こるアクションをQTEで操作する。

脚本内容:子供が誘拐されたので探し回る、周囲との関係性の変化、敵に襲われるといった出来事が起こりつつ、真相に迫っていく

プレイヤーにさせたい体験:主人公たちは誰かを殴る、自分の指を切るといった行動をし、プレイヤーはその操作をするが、それらがあたかも自分が殴ったりプレイヤー自身の指が切られるかのような緊張感を体感する。

他人の話だってわかってるはずなのに自分のことだと錯覚してくれること

……他にも挙げれますがこのへんで。

ナラティブという単語が2013年頃にバズワードになりましたが、脚本内に出てきたキャラクターに対して感情移入し、その後の操作についてプレイヤーが自分で考え、自分の体験として捉えてくれる・錯覚してくれることができればナラティブとして成功だとおもいます。

そのように演出してシナリオを書いていけば、あとはキャラクターが勝手に動き出してどのような話になるのか導いてくれるはずです。自分の中に住むキャラクターの声に耳を傾けましょう。キャラクターが教えてくれるまで試行錯誤を重ねてもがくことです。そこは小説や通常の脚本を書くのと同じです。

ゲームシナリオを書くときに考えることは多いけれど

そもそもゲームシナリオを書くとき、書く人はどのようなことを考えているのか。

私はまず書きたいことをEvernoteに書き散らしまくって整理しながらまとめ、三幕構成に落とし込んで過不足を明確にし、そぎ落とすべきところはそぎ落とし、補強・強調すべきところを補強していく……という方法でプロットを作っているのですが、

CwGKIrsUkAAzpkz.jpg CwGKItsUIAAtksg.jpg

「このキャラクターにそっけないことをつい言わせちゃったけど、読者としては印象あんまり良くないなぁ。後でこのキャラクター使うし、そっけないけど実は申し訳なく思ってるってことにして、ちょっとセリフ修正しよう」
「後でこの二人くっつく予定だけど、第一印象が良すぎるからつまらないなぁ。お互いの第一印象を悪くしておいて後から仲良くなるようにしよう」

そんなふうにキャラクターやお話の見せかたを工夫したり,

smile.jpeg

「『428~封鎖された渋谷で~』に出てきた『バーニングハンマー』という飲み物が面白かったから自作ゲーの主人公にも呑ませよう」「428に出てきた電器店の名前を使おう」

cb65772b.jpeg

「映画『海の上のピアニスト』で、『1900がパーティに参加している観客を見て、イメージ音楽を即興で弾きながらどんな人なのか推理するシーン』が好きで、書いてるヒロインもちょうど感覚型のピアニストだから、同じことをさせよう」

そういった書き手の個人的趣味を入れたり、

images[11].jpeg

「浮気をするというゲームのシステム上、倫理上良くないことではあるから、主人公が本当にゲスな人だと感情移入できないなぁ。80年代の漫画に出てきそうな三枚目チックな感じ(例えばシティーハンターの冴羽とか、めぞん一刻の五代君とか)にして、プレイヤーが主人公を笑えるようにしよう。あんまり感情移入しすぎずに「こいつ馬鹿だなー」って笑いつつ、自分が浮気してるみたいなドキドキ感を体験してもらえるといいな」
「ゲームシステム上、あと話がどのぐらい続くのかわかりにくいとプレイヤーに不親切だし普通にプレイしてて辛いだろうから、ここのシナリオ上でタイムリミットを設けよう」

ゲームデザイン上の縛りや特色を盛り込んだり。

このように、脚本(特にゲームの脚本)を書く時にはいろいろなことを考えるものです。

その際、今回書いたような「感情を設計する」ことを思い出すようにしたいものです。

みなさんアドベンチャーゲーム(脚本主体ゲーム)作りましょう

今回の記事では、脚本を書く上で考えべきことの一つとして、読み手の感情を想定しておいて、それを操るということを紹介したかったのでした。

ナラティブさを狙ったゲームシナリオを書く上で忘れないようにしたいもの。次は今作ってるゲームが完成して、評判が良ければ(重要!)、具体例を交えてどのように設計したかを解説してみたいです。

明日は @yasさんのエントリです

1 RIRA (@RIRA)

感情設計は、ビジュアルノベルでは生命線的な役割を担っているのは確かでしょうね。個人的なことを述べれば、感情設計の重要な要素は大きく2つに分かれると思っています。

一つ目は「人対人の対話で現れる感情の変化」です。個性溢れるキャラクターたちと、どう対話させ、感情の変化を付けるのかというような変化です。

二つ目は「風景による感情の変化」です。簡単な例で言えば、雨の日の風景、満月の日の風景、平行世界ごとの風景などです。このような風景によっても自然と感情は変化していくと思います。

これら二つを指標に沿えてビジュアルノベルの感情設計について考えていくことが個人的には重要かなと思います。

Participants are only allowed to comment on the entry. Please login to comment.