インタラクティブミュージックによる4つの方向性

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InteractiveMusicLaboratory • インタラクティブミュージック紹介会を開催しました。

前回のIM研で話した、こんな図の意味がわかりやすく伝わるように、順を追って書いていくので、図だけでもいいので眺めていただけると嬉しい。

ゲームの感情曲線

ゲームには感情の起伏がある。喜怒哀楽、起承転結、様々なタイムスケールでそういった感情のゆらぎを作り出し、プレイヤーを楽しませるのがゲーム、とも言える。

音楽はそこでは非常に大きな役割を果たしており、基本的には音楽は無いよりあったほうが、その感情を何倍にも増幅させる。

その感情というのは、基本的には(ベクトル値のように)喜怒哀楽などの方向性があり、そもそも音楽がその方向性に合っていなければ(内積が小さければ)その分感情は増幅されないどころか台無しにすらされるんだけど、以後の議論では簡単のためそういった方向性は考慮せず、すべて合っているものとして(絶対値だけを取り出して)扱う。

さて、ここに、「音楽がインタラクティブじゃない」場合のゲームが生み出す感情曲線と音楽が生み出す感情曲線のグラフを描いてみた。

non-interactiveMusic.png

ゲーム全体で表現される感情曲線というのは、2つのグラフの合計値となる。

次に、音楽がインタラクティブだった場合これがどうなるかというと、

interactiveMusic.png

音楽がゲームの体験に同期することで、ゲーム的に感情が高ぶって欲しいところで全体の感情も大きく高ぶり、特にピークの所では(non-interactiveの場合には届かないくらい)感情変化の最大値を引き出すことが出来る。

これが単純に、音楽がインタラクティブであったほうがいい、という説明になるわけだが、じゃあ実際、上のグラフのように「そんなめちゃくちゃに音楽と合ってないゲームなんてあるのかよ!」と感じた方もいるかもしれない。そこで次のテーマに移ることが出来る。

ゲームの感情変化のタイムスケール

さっきのグラフを、適当なRPGに当てはめて考えてみよう。

RPGMusic.png

ゲーム開始からエンディングまで、という流れで見ると、ラスボス曲は確実にそれに見合った感情の高ぶりを表現しているだろうからこんな感じに推移して、このグラフの形は間違いなくインタラクティブミュージックである。

しかし、もっと狭い時間を見てみると、例えばRPGの戦闘時の音楽変化を見てみるとどうだろうか。

RPGBattleMusic.png

大まかに合っているが、例えば一番大きい攻撃が当たった所だと、プレイヤーの感情を最大限高められているかといえばNOだ。

補足すると、一般的に、RPGの戦闘は戦闘開始時の流れは固定されているので、音楽もそれに合わせて非常にうまく設計されているように感じられる。ポケモンで言うと、両方がモンスターボールからポケモンを出して、コマンド選択が可能になった所あたりでイントロが終わって曲調が変わるはずだ。

また、リザルトのあるゲームの場合はそこで音楽が変化し、それに合わせた感情を演出しているだろう。結果によってResult曲が分岐するような事をやっているゲーム(FF13-2など)もある。ここらへんは、音楽的に繋がっていなくとも、感情に同期しているほうが重要なので、充分インタラクティブであり素晴らしいと思う。

しかしこれが、インタラクティブミュージックの場合は次のようになる。これをうまくやっている例は今のところ風のタクトくらいしか無い(音楽ファンタジーも同じような曲線を目指したが、まぁ、流石にそこまで洗練されてない)と思っているので、その特定タイトルを引き合いに出してみると、こんな感じになっている。

ZeldaBattleMusic.png

参考動画 : ゼルダの伝説 風のタクト 中ボス戦集 ~前編~ - YouTube

攻撃している所で、はっきりと音楽がオケのトゥッティで合わせているのがわかる。この場合、合わせるというより、攻撃が音楽で表されている、と言ったほうが近い。

風タクの場合、さらにHPによってテンポが変化していたり、敵が目を回しているか近くにいるかによってパーカッションが入ったり無くなったりしているので、あらゆるところで同期させる仕組みが動いている。

インタラクティブミュージックの分類軸の提案その1「細かさ(≒音楽の意味)」

上で説明したバトル時の変化とゲーム全体での変化は、ひとえに音楽を変化させる細かさ(さっきの感情曲線を波と捉えると、その周波数)の違いと言える。

そして一般的に、プレイヤーの行動が細かくインタラクションによって変化するのに対して、ゲームが表現する世界観は大きな流れで変化していくので、細かく変化する音楽はプレイヤーの行動を、大きく変化する音楽は世界観を表していることが多い。

これを、インタラクティブミュージックを分類する一つの軸と捉えられないだろうか。つまり、こんな感じ

MeaningAxis.png

昨今のJRPGや洋ゲーのRPGを見ても、大まかな音楽変化のほうは非常に多く用いられるようになっており、ストーリーや世界観を音楽で表現する方法は一般的になっていると言える。

そういった使い方の場合でも、Jouney(風ノ旅ビト)のように、大きな場面変化に合わせた音楽変化を作れば、世界を感じる体験でも瞬間的に非常に高い感情を引き出すことができている。

一方、プレイヤーの行動を表すような細かい音楽変化の場合は音楽的にもゲームデザイン的にも様々な工夫が必要で、そこまで多くないのが現状だ。

プレイヤーが任意のタイミングでアクションができることが当たり前となった現在のゲームでは、音楽をそれに合わせるにはかなり柔軟にする事が必要で、そうでないものと比べて音楽的に完成度を高めるのが難しい、というジレンマがある(そのため、個人的にはここをゲームデザイン時に考慮した設計にすることで、両立させるのが良いと考えていて、そのひとつの解がVOXQUESTである)。

ちなみに、細かいほうがインタラクティブミュージックである、というわけではない。細かいほうがわかりやすいが、両者は伝えたいことがプレイヤーのアクションなのか世界観なのかで分けられるべきだ。音楽がインタラクティブに使われているかどうかは、これと垂直に交わる軸になる。

インタラクティブミュージックの分類軸の提案その2「目的」

ここでもう一つの軸を提案して、2軸でインタラクティブミュージックを分類してみたい。

それは、プレイヤーがゲーム……いや、広く言うとそのインタラクティブ・システムを使う「目的」である。

PurposeAxis.png

今までは単純にゲームを仮定して「感情曲線」を前提にしてきたが、実は世に出ているインタラクティブミュージックを使った作品の中には、ゲームシステムによる感情変化に頼らず、音楽だけによって感情変化を作ってしまう、またはプレイヤーが自由に感情変化を創りだすものが存在する。

その代表的なものが音ゲーである。音ゲーは(これは違和感を感じる方もいるかもしれないが)音楽を楽しむことが目的である。

いや、音ゲーはシューティングだ!スコアを叩きだすことを楽しむゲームなんだ!という方もいるかもしれないが、ちょっと待って欲しい。ここで軸として取り出したいのは、その音楽がゲーム中の他の要素を表しているかどうか、だ。

音楽以外の意味がある場合 : 例えば、ドラクエであればBGMは世界観を表しているだろうし、各種ファンファーレはレベルアップとか宿で休むとか、ゲーム的な意味がある。そして、ゲーム中の特定の体験と音楽が、強く結びつく

音楽単体で意味を創りだす場合 : 音ゲーの場合は、その音楽の意味は音楽単体によってもたらされており、インスト曲なら抽象的な雰囲気だったりかっこよさだったりするだろうし、歌詞つきの曲ならその歌詞、音楽が表す世界観だろう。その音楽が好きであればあるほど、こういった体験を楽しめる。

これは非常に大きな違いだと思う。

(音楽以外の)ゲーム攻略が目的の場合 : ゲーム攻略が目的となっている場合、ゲームシステムからまず感情や意味が生み出され、音楽はそれに対応しているだけで、プレイヤーは音楽が表すものを受け身で知ることが出来る

音楽を楽しむのが目的の場合 : 一方、音楽を目的としている場合、ユーザーはその音楽が好きであったり、または音楽に対して自分から歩み寄ることが必要になる。音楽の意味を自分で創りだす(作曲に近い)か、音楽の意味を元から知っている(知ってる曲の音ゲーをやる)というのがこの方向である。

作品としては、ターゲットが違うということになる。前者は良いゲーム体験をしたいという幅広い層に求められる表現であるのに対して、後者は特定の音楽が好きだったり、作曲とか音楽自体に興味がある層に求められる。

これも、どちらが優れているというわけではなく、伝えたいことが音楽の良さなのか、別の体験の良さなのか、という事によって分けられる、というだけである。音楽がインタラクティブに使われているかどうかは、これとも垂直に交わる軸になる。

インタラクティブミュージックを4象限に分類

以上の2つの軸を使って、インタラクティブミュージックを分類できるのではないかと考えた。次がその図である。

IMmapping.png

……お分かりいただけただろうか?

今のゲームでは、特に左上と右下の方向が多いと思う。

正直に自分で作ってみてこのマッピングの弱点を表すと、まず「原点が何なのかわからない」というところだ。原点に近づくに連れて、一体何のことだかわからないし分類も難しくなる。

あと、変化の細かさの軸は目的軸が下に行くに連れて曖昧になり、世界観を表しているのかプレイヤーを表しているのかってそもそも音楽が主目的の場合にはどっちも無いのであって、難しい所である。

なので、原点付近と下の方の左右の細い位置については突っ込まないで欲しい。。申し訳ない。

あと、1作品を一つの点で表すのはそもそも無理で、各モードによって違ったりもするので、本当はそれぞれが領域のような形で表されて、その中心点あたりが描かれていると思って欲しい。

で、そんな弱点満載の2軸だが、こういう風にナナメの4方向には明確な方向性があると感じている。

IMmappingCross_1.png

こうして見ると、それぞれの象限において、音楽の使われ方というのがまったく違うのがわかる。

左上

左上は一般的なRPGなどのゲームに多く、最終的には映画的な体験をゲームというインタラクティブシステムの中で感じられるようにすることが音楽をつける意図でもある。

ここでは、インタラクティブミュージックを使う事によって制作者が表現する世界観というのをプレイヤーによりダイレクトに、強い感情を伴って伝えることができる。

また、大きい流れとはいえプレイヤーの体験と音楽が結びついているので、ゲーム音楽という、プレイヤーの感情を引き出しやすい音楽の1ジャンルとしての人気もある。

左下

左下はプレイヤー、あるいはユーザーがインタラクティブシステムを使って(ゲームからの感情ではなく)自分の表現したい感情を表す音楽を作ることを支援する事ができる。

ここでは、インタラクティブミュージックを使うことによってプレイヤーにより直感的に音楽を作る能力を付与することが出来るが、プレイヤー側には「表現したい感情」や「音楽を作るモチベーション」が必要になる。

右下

右下は非常にわかりやすく、音ゲーの行き着く先は本物の演奏感である。ゲーム自体が音楽に完全に合わせる形で構成されるため、常にインタラクティブミュージックとして最高の同期状態にある事が利点だが、プレイヤーがその音楽を知っているなどの状態が必要になる。

右上

右上は、プレイヤーはゲームの事を考えてプレイするけど、プレイ自体が音楽として表現される、という事になる。

ここが個人的に最も新しい可能性があると感じている所で、行き着く先はミュージカルとかディズニー映画、トムとジェリーみたいなのに近くなると思うのだが、戦闘などのゲーム的な体験をそれに近づける事で新しい体験を作りやすい。

まとめ

とりあえずこれで、「インタラクティブミュージック」と広く言った場合に、どこに分類されるような表現をやりたいのか、ということがわかると、やりたいことをより明確に伝えられるのではないかと思うので、IM研に関わる方々は、自分が興味あるのがどのあたりなのか、あるいは全体的になのか、ちょっと考えてみていただけると嬉しい。

単純にインタラクティブに音楽を使いたい、といった場合と比べて、よりはっきりとやりたいことを明確にできると、作っていく上でもブレや伝達の齟齬が少なくなっていいんじゃないかと思う。

自分もこういう考えが最近できあがるまではかなり全体的にぼんやりしていたので、右上あたりにフォーカスを絞って作って行きたいと考えている。あと今まで作ってきたものも、すべて右上に属するものだと思っている。

一方で、IM研としては、どこかの象限にフォーカスするわけではなく、すべてのジャンルのインタラクティブ・システムについて、より良いインタラクティブミュージック(この軸はどちらとも垂直に交差する、この画面から飛び出るような方向にあると考えている)を実現するための支援をしていきたい。

長々とお読みいただいた方、目を通していただいた方、本当にありがとうございますm(_ _)m

1 Falken (@kaiyamada)

これと関係あるのかわかりませんが、例えばAOEなどで大規模線のときだけBGMがすり替わるのとかはインタラクティブなのでしょうか?

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