ラウドネス管理してますか?【KawazAdventCalendar 12/6】

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みなさん、こんにちは。SHiNKA (@shinka_cb) です。本日12月7日でありますが、 12月6日のKawaz Advent Calendarを担当してます。遅くなってしまいすみません。

というわけで、今回の話題はゲームのラウドネスです。

ラウドネス管理してますか?

長い!難しい!今北産業

ゲームにおける全体の音量調整はユーザービリティーの観点からも重要です。
他のゲームと比較してあまり音量差が発生しないようにしましょう。
最近は、ユーザーが感じる主観的な音量感を表す指標としてラウドネスというものが使われています。
とは言え、まだまだゲーム間の音量差の問題は完全に解消はされておらず今後も解決すべき課題となっています。
※あ、4行になってしまった・・・

なぜ今になってゲームの音量管理に気をつけないといけないのか?

放送業界では地上波デジタル放送を導入したころから番組やCMの音量ばらつきが問題に

アナログ放送では電波として送信される前の最終段で規定を超える出力を抑えるリミッターが挿されていましたが、 地デジではデジタル信号のダイナミックレンジを最大限に活かすために、そのリミッターが廃止されました。 その結果、番組間やCMの音量差が顕著になり、特にCMの音量が大きすぎてユーザーは逐一音量調整を強いられる ようになりました。

テレビを製造している家電メーカーは逐一音量調整を強いられているユーザーのためにAGC(Auto Gain Control)機能 をテレビに実装するようになりました。しかし、地上波デジタル放送で表現できる音声のダイナミックレンジが スポイルされてことになり、本末転倒になってしましました。

ユーザーが「うるさい」と感じる主観的な音量を「ラウドネス」という指標で導入

そこで、番組やCMの「人間の主観的なうるささ」を番組・CM制作の段階で揃えるために 「ラウドネス」という指標が長年の議論の末、策定されました。人間は、瞬発的な音よりも 継続的な音の方が「うるさい」と感じます。また、低音より、中高音域の方が耳障りと 感じる傾向があります。このような「主観的な」要素がこのラウドネスという指標を決める ために定量化されました。

民法では2012年10月から、NHKでは2013年4月からラウドネスによる音声レベル管理が導入される

そして、そのラウドネスが実際に民法では2012年10月から、NHKでは2013年4月から音声レベル 管理の指標として導入されました。後述のラウドネス基準を満たさない場合、放送すること ができず、製作元に差し戻されるという、厳格な運用がされています。また、うるさ過ぎる だけでなく、「静か過ぎる」場合でも明示的な理由がない限りは差し戻されます。

ゲーム業界にも、ラウドネス管理の波が押し寄せる

据え置きゲーム機もテレビにつなげる機器である以上、テレビ番組の音声レベルとあまりに かけ離れすぎるとユーザーに音量調整を強いることになるので、放送業界が導入したラウドネス管理 に追随しなくてはならなくなりました。ゲーム業界ではSCEを中心に2011年4月に 「Audio Standards Working Group (ASWG)」というワーキンググループを立ち上げ、ゲーム業界でも ラウドネス基準を策定しました。

iOS / Android のゲームでは関係ないのでは?

ASWGでは、据え置き機だけでなく、ポータブル機におけるラウドネス基準も決められた

PS Vitaのゲームに対してもラウドネスによる音声レベルの基準が設けられました ので、モバイルプラットフォームでマルチプラットフォーム展開する際にラウドネスによる 音声レベル管理が必要になると考えられます。 そういった意識で制作されたゲームがiOS / Android 上でもリリースされることが考えられるので、 PS Vita向けのゲームでなくてもラウドネス管理をする必要が出てくると予想されます。

ラウドネスとは

ラウドネス測定アルゴリズムと指標の単位

BS.1770-3」という規格名で文章化 されていますが、その概要を図にまとめてみました。

loudness.png

中でも大事な要素は以下の3つです。他にもショートタームラウドネスなどの指標があり ますが割愛します。

  • モーメンタリーラウドネス
    瞬間的(0.4 sec)なラウドネス(最も人間の感覚に近い)
  • ロングタームラウドネス(プログラムラウドネス)
    コンテンツの平均ラウドネス(コンテンツ自体のうるささを端的に表す)
  • トゥルーピーク (True Peak)
    音声信号の最大値(詳しい説明は図を参照)

単位はLUFS、または、LKFSが用いられます。サイン波を継続的に鳴らしたときのピーク値が LUFSと同じ数値となります(例えば、-18dBのサイン波なら、-18LUFS)。 LKFSは、人間の耳の特性で重み付けをした値で、より人間の主観に近い特性を持つと言わ れています。例えば、同じ-18dBのサイン波でも、低音(100Hzなど)のサイン波よりも、 高音(4kHzなど)のサイン波の方が人間にとってはうるさく感じます。

よくわからない方は、LUFSやLKFSという単位は「音のうるささ」をなるべく人間の主観に 近づけた指標だと思っておけば大丈夫だと思います。

測定方法

  • ラウドネスメーター
    有償、無償プラグイン、ハードウェアのメーターなど、いろいろあります。 Steinbergが公開しているSLM128 というVSTプラグインが無償で利用できるのでCubaseユーザーはとりあえず試してみると 良いと思います。ちなみに僕はTC ElectricのLM2 というプラグインを使っています。

現在運用されているラウドネス基準、運用されようとしているラウドネス基準

  • 日本の放送業界では「ARIB TR-B32」という規定 が2012年10月から運用されている。
    ロングタームラウドネスが -24±1 LKFS
    True Peakが -0.1 dBTP

  • ゲーム業界では、4Gamerの記事 によると、PS3とPS Vitaでラウドネス基準が「ASWG-R001」というRecommendation(Requirementではない)で策定された模様。
    PS3→ロングタームラウドネス -23±2 LUFS、True Peak -0.1 dBTP
    PS Vita→ロングタームラウドネス -18±2 LUFS、True Peak -0.1 dbTP

現状は? ということで、いろいろなゲームでラウドネスを測定しました

波形データのノーマライズは していません。 異なるハードウェア間の信号レベルの差異を無くす為に、テスト信号(1kHz、-18dB)で レベル合わせをしてあります。 ラウドネス測定には、TC ElectricのLM2プラグインを使用しました。

測定方法としては、ゲームを実際に30分から1時間程度プレイをして、その後、ゲーム中の 静かなパート(探索パートなど)と、音量の大きなパート(戦闘パートなど)が最もバランス 良くなるように編集したものを最終的に1ゲームあたり5分間の波形としました。

DPP07DD0C01112D53.jpg

信号レベル測定中の光景(どうでもいい

測定結果を以下の図で示します。PS3とPS Vitaについてはラウドネス値が基準の範囲内に おさまっているものは青字で強調してあります。また、True Peakが基準を逸脱したものは 青字で強調してあります。ラウドネス値の前に括弧でくくられた数字はゲームのリリース年です。

PS3

ps3.png

PS Vita

psvita.png

iOS (iPad)

ipad.png

参考:昨今のとあるアニメの音声レベル (-24LKFS)

anime.png

ラウドネス管理は難しい

波形を一目見て分かりますように、各ゲームで音量がバラバラです。それも最近リリースされた ゲームであってでも、です。ですが、これだけでは考察にならないのでおおまかな傾向を見て 行きましょう。

  • パブリッシャーによって音声レベルの管理基準が異なる
    統一の必要性
  • 音楽が主体となるゲーム、かつ、曲の展開が変わらないと予め分かっているゲーム
    (所謂「音ゲー」)は、ダイナミックレンジが殆ど確保されておらず、非常に音声レベルが高い。 (CDや動画共有サイトの「音圧競争」の犠牲に…)
  • インタラクティブコンテンツ特有の難しさ
    ラウドネス指標はあくまで平均値。どのようなサウンドがどのタイミングで再生されるのか 予想が難しいのでラウドネス管理も同様に難しい。現在のゲーム業界でもいろいろな勉強会で 話題に上がっている。

音屋の観点から

あくまで、ゲームに組み込むのを前提とした曲作りの話です。

必要以上に音圧を上げすぎた2mixを作らない(昆布波形にしない)

必要以上にダイナミックレンジを無くすとゲームに組み込んだ時に予想以上に迫力さに欠けることに なったり、本来確保されているダイナミックレンジを使い切れないのはやはり勿体ない

据え置き、ポータブルゲーム機によってノウハウが異なる

据え置きはダイナミックレンジを活かすことができる
とはいえ、住宅事情で急に大きな音を鳴らされても困る
→ダイナミックレンジの広さを選べるオプションを設けるなど(The Last of Usなど)

ポータブルゲーム機はスピーカーが小さかったり、雑音の大きい環境で聞き取りづらい
→ダイナミックレンジを少し犠牲にして小さな音を持ち上げる
→スピーカー出力とイヤホン出力で音質を変える(モンスターハンターポータブルシリーズなど)

まとめ

ゲームにおける全体の音量調整はユーザービリティーの観点からも重要です。
他のゲームと比較してあまり音量差が発生しないようにしましょう。
最近は、ユーザーが感じる主観的な音量感を表す指標としてラウドネスというものが使われています。
とは言え、まだまだゲーム間の音量差の問題は完全に解消はされておらず今後も解決すべき課題となっています。
(冒頭のコピペ)

本記事をきっかけに、ゲーム中の音声のレベルというものに対する配慮、関心が少しでも 深まれば、ラウドネス測定に延べ10時間弱かけた私の苦労が報われます(ぉ

その他参考になりそうな情報源

ゲーム業界のラウドネスに関する記事は本記事中でもリンクを貼りました 4Gamerの記事 が参考になると思われます。また、このラウドネスの話は近年CEDECやIGDA JapanのSIG-AUDIO でも活発にノウハウや情報共有がされていますので、色々と記事や公開されているスライドを 見ると良いと思います。

1 AttaQ (@AttaQ)

テレビの件は一通り知っていましたが
ゲームの件は正直無知でした。大変勉強になりました。
Nuendoの何かだと思っていたので無料公開されているとは・・・頂きました。

これから意識するようにします。BGMはまだいいとして
効果音周りはフィーリングでやっていたので。
海苔波形怖い

2 Yudaidhun (@Yudaidhun)

収録お疲れ様でした!
あらためて波形で見るとほんとに差がすごいですな。

>インタラクティブコンテンツ特有の難しさ
これは大変ですよね!
前にもるしゃな先生と、効果音+BGMにおけるラウドネスやピーク管理についてお話ししましたが、どうにも全体のレベルを下げることぐらいしか思いつきませんでした。
検証された波形の様子を見ていると、その辺のノウハウってデベロッパごとに全然違ってそうですよね。

3 SHiNKA (@shinka_cb)

>AttaQ さん
ゲームのラウドネスマネージメントはまだ始まったばかりの話なので、みんなで試行錯誤してそのノウハウが溜まっていくといいですよね

>Yudaidhun さん
思った以上に音量ばらばらで収録した自分も正直驚きました。明確な基準がなかったので仕方ない部分もありますけどね。ただ、中にはデジタルクリップしてるゲームもあったりしたので、なかなかインタラクティブコンテンツは難しいなぁと思いました。

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